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はじめに
道具
作法・ルール
タイムシートについて
トレス・クリンナップ
動画作成の手順
中割のテクニック
実例@:目パチ
・口パク
実例A:振り向き
実例B:歩き
実例C:走り
実例D:波送り〜しなり
実例E:エフェクト
-作例集-
TIPS!
思いつき作例集
あとがき・参考資料
トレス・クリンナップ
作品や演出によって表現が変わることはあるが、一般的なセル式アニメーションの表現としては整ったなめらかな線で描画することが基本となる。アニメーター(動画マン)としての必須の基本能力として、原画のラフな線を整った線でトレスする事(クリンナップ)が出来なければならない。線の美しさだけでなくキャラクター設定に照らして間違いがないか、必要に応じて原画の不備もフォローする。
トレスの良し悪しがキャラクター等の見映えに影響するだけでなく、中割にも影響
するので一番最初に習得すべき技術。
※線の粗さや形の不正確さが中割で修正されることはまず無く、むしろ劣化していく危険性が高い。

まず…
原画・作監修正をよく見て(必要に応じてキャラクター設定表、絵コンテ等を見て)、これから何を描くのかカット内容・状況等を理解したうえで作業を始める。










口パクや目パチ、なびいた髪 等々,セル分けがある場合はこの段階でセルごとに別紙にトレスしていく。








・セル(レイヤー)の構成を正しく認識して作業を効率よくかつ確実に
(自主制作サークルの動画研修生向けの解説)
原画・修正原画

動画のセル分け

実線トレス
原画の雰囲気を壊さない様に配慮しつつ、線を引きやすい角度に紙を回しながら清書していく。長い線は無理に一気に引く必要はない。描きやすい長さをつなぐ形で構わないので、きれいな一本の線に見えるように、つなぎ目が分からないように仕上げる。

現在は細めで均一の太さの線が主流のようだが、作品によっては線に強弱をつけることも必要になる。

スキャン(データ化・取り込み)の際に確実に取り込めるように、かすれたり途切れたりしない、はっきりとした線を描くように心がける。
・動画の線は何故、濃く滑らかでないといけないのか?
(自主制作サークルの動画研修生向けの解説)

線を引きやすい角度に紙を回す

目と髪の関係
作品やキャラクターによって、または演出によって髪から目が透けて見える表現をする場合がある。原画で目が描かれていても、実際の処理はどうなっているのか必ず確認の上トレスをすること。 髪の下の目の処理

色トレス
色のついた線自体を表現の一部として使用する場合もあるが、通常色トレスは塗り分けの境界として描く場合が多いので、なるべく均一の細い線で途切れないように描く。


*色トレスの例
 ・影、ハイライト等の塗り分け線
 ・目と肌の境界線
 ・服の模様等の塗り分け線
 ・エフェクト
 ・組み線
クリンナップ例

エフェクトのトレス例

       トレスを確認 
1枚トレスが終わったら画像の様に原画とクリンナップ済み動画を見比べて、確実に原画のニュアンスが拾えているかを確認する。バストアップサイズで線一本分ズレていたらズレ過ぎ(と言う意識で)

トレスのコツ
1.今描いている線と交差・隣接する線の関係を意識する。
 作例の場合、手前から髪・頬・首となるが、手前に来る線ほど強調するような“意識”を持ってトレスすると奥行きが出る。

2.今描いているパーツの質感を意識する。
 髪留めの硬さと髪の柔らかさなど、素材からくる質感の差を“意識”してトレスする。

3.髪など流れるような線の末端は筆の様にはらう感じで。

 いわゆるヌキのテクニックを使って、線の先が突然切れる事無く、滑らかな処理を心掛ける。
トレスの留意点

動画泣かせの原画?
 同じ作品、同じキャラクターを描いていても、描き手によって当然いろいろな違いがある。それは絵柄だけではなく、線の描き方一つ取っても描き手と同じだけの違いがあるものだ。アニメの原画でもアニメーターによって個性が現れる。そんな違いを直接目の当たりにできる事は結構楽しく、動画マンの役得だ。管理人も現役時代にはうまい原画がまわってきた時などは、参考用にコピーをさせてもらったものだ。そんな多くの原画の中にはどうにも動画泣かせの原画/修正を描くアニメーターもいるのだ。
 そんな厄介な、と言うかやり辛いアニメーターの一人が神村幸子さんだ。誤解の無いよう言っておくが、わかり辛いとか汚いとかではない。むしろ逆で、あまりにきれいで丁寧な線を描かれるので、ヘタな動画マンだとかえって“クリンナップ”にならず、原画よりも汚い線に見えてしまう危険性が大きいのだ。一時期、細めのサインペンで色トレス部分を描いておられた時(筆圧をかけずに描けて楽だから…だったかな?)があったが、ミスをしたら取り返しのつかない道具を使っているにもかかわらず迷っている様子が微塵も感じられない、実に滑らかで美しい線だったと記憶している。
 また別の点で動画泣かせなのが、あの安彦良和さんの原画だった。先ごろ出版された『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』で改めてその凄さを見せつけ、業界の話題をさらったあの安彦さんである。管理人は現役時代、幸いにも一度だけ、安彦さんの原画を動画にする機会に恵まれた。鉛筆で描かれているにもかかわらず柔らかく流麗な線。“ガンダム”よりも先にマンガ“アリオン”の、筆で描かれた美しい線の印象で安彦さんの名前を覚えた身としては、目の前にあるその線に感動を覚えたものだ。だが、動画マンとしては非常に厄介で、この線の美しさを損なわずいかに動画として成立させるか。クリンナップだけで相当に神経を使った記憶がある。もちろん動いてナンボの動画ではあるが、美しい絵は美しいまま仕上げたいのが絵描きとしての性だ。

 そんな安彦・神村両氏が手を組み、尚且つ“アニメーター安彦良和”最後の作品となった“ヴイナス戦記”がビデオ/LDを最後に日本ではメディア化されていない。理由についてはいろいろな憶測がネットでも囁かれているが、実に惜しいことだ。
 参加アニメーターの豪華さもさることながら、納谷悟朗氏や塩沢兼人氏の演技、それを支える音響監督で声優の千葉耕市氏
(その節はお世話になりました)の演技指導、そして柳ジョージ氏(“雨に泣いてる‥”は折々に聞きたくなる)の歌う主題歌など、今は亡き偉大なクリエーター諸氏の技をより良い形で見たい、残したいと思うのは至極当然な欲求だと思うのだが…。(ちなみに音楽は久石譲!)
 実は、上の安彦さんの話は管理人がこの作品に参加していた時の事。モノバイやらタコやらドンガメやら煙なんかを大量に描いていた中での幸せなひと時だった。ぜひきれいな画質でメディア化を!

♪明日への風:柳ジョージ